卒業記念編
(2年生秋学期~卒業までを振り返って)

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 高校生、受験生、保護者の皆様、こんにちは。この度は、横浜国立大学 経営学部、並びにDSEPにご関心をお持ち頂き、ありがとうございます。私は経営学部DSEP運営委員長の鶴見裕之と申します。
 このページでは、4年間の学びを終え、この春に卒業を迎えるDSEP第1期生に、DSEPでの学びや経験、そしてゼミ活動や就職活動などについて伺った卒業記念インタビューの様子をお届けいたします。
 なお、今回ご協力いただいたおふたりには、1年生の時にもDSEPでの学びについてインタビューに応じていただいております(廣田さんは第1回・第3回・第4回、稲岡さんは第1回・第2回・第4回のインタビューにご登場)。当時の記事も併せてご覧いただけますと、DSEPでの成長の軌跡を感じていただけるかと存じます。
 今回、インタビューにご協力頂いたのは、経営学部DSEP第1期生の廣田太一さん、稲岡玲さんのおふたりです。インタビュアーは私、鶴見が務めました。


---2025年1月21日、横浜国立大学の経営学研究棟 応接室にて。


鶴見 本日は卒業記念インタビューということで、DSEP1期生のおふたりにお越しいただきました。廣田さん、稲岡さん、本日はよろしくお願いいたします。
廣田さん・稲岡さん よろしくお願いします。

ゼミ選択の理由 - 実践的なデータサイエンスを求めて

鶴見 さて、おふたりは1年生から2年生春学期までのデータサイエンス・ゼミナールを終え、2年生秋学期から卒業までは経営学部の本橋ゼミナールにご所属されていますね*。本橋ゼミナールを志望した理由を教えてください。

*経営学部DSEP生は全員、入学から2年生春学期までデータサイエンス・ゼミナールに所属し、データサイエンスの基礎を徹底的に学びます。2年生の秋学期からは、各自の興味、関心に合わせて経営学部の様々なゼミナールから1つを選択、志願し、セレクションへて、卒業まで所属します。



廣田さん ゼミ選びで重視したポイントは2つありました。1つ目は、DSEPのデータサイエンス・ゼミナールで学んだ、データを使って問題を解決する力を、さらに伸ばせる環境であること。2つ目は、実際のビジネスの現場でデータサイエンスがどう役立つのかを学べることです。本橋先生は、ご自身も会社を経営されているので、データサイエンスを社会でどう活かすかを、実際の経験に基づいて学べると思い、本橋ゼミを希望しました。

稲岡さん 僕は、2年生の春学期にデータサイエンス・ゼミナールで本橋先生に教えていただいて、その知識の深さと、熱心な教え方にとても魅力を感じていました。DSEPで学んだことを、もっと専門的に、もっと実践的に学びたいと思い、本橋ゼミを希望しました。

鶴見  おふたりとも、1年生から2年生の春学期までに学んだデータサイエンスを、さらに実践的に高めたいという、はっきりとした目標を持って本橋ゼミを選ばれたんですね。


ゼミナールでの学び - ビジネスに活きる力を身に付けた2年半

鶴見 本橋ゼミでは、具体的にどのような活動に取り組んでこられたのでしょうか?2年半の活動を振り返って、特に印象に残っていることを教えてください。

廣田さん 2年生の秋学期は、横浜国立大学ビジネスプランコンテスト、通称YBC*に参加しました。2年生と3年生が一緒にチームを組んで、新しいビジネスのアイデアを考え、実際に実現できるレベルまで計画を練り上げる、というコンテストです。  

*YBCは、横浜国立大学の学生が主体となって運営するビジネスプランコンテストです。横浜国立大学・校友会・富丘会などの協力のもと、大学公認で実施されています。


稲岡さん YBCでは、データを分析する力だけでなく、ビジネスのアイデアを自分で考える力、それを分かりやすく人に伝える力など、様々な能力が求められました。データサイエンスは、ビジネスを成功させるための「道具」であって、それだけでは十分ではない、ということを学びました。

廣田さん YBCと並行して、データ分析の基礎となるプログラミング言語「R」および「Python」をを、より深く理解するための勉強会も、ゼミの仲間と一緒に行いました。教科書を読み込んだり、実際にプログラムを書いて練習問題を解いたりしながら、みんなで教え合いました。

稲岡さん 3年生になってからは、アプリ開発とデータ解析コンペティションに取り組みました。

廣田さん アプリ開発では、私は、よく行くコーヒーショップの店長さんに協力してもらい、お店の売上データを使って、将来のコーヒー豆の仕入れ量を予測するアプリを作りました。

稲岡さん 僕は、株式投資に興味があったので、企業の財務諸表(会社の経営状態を表すデータ)を分析するアプリを作りました。最近話題のAI技術であるChatGPTを活用して、財務諸表の内容を分かりやすくまとめたり、質問に答えてもらったりする機能を付けました。

廣田さん アプリ開発を通して、DSEPや授業で学んだプログラミングの知識やデータ分析の技術を、実際に「形」にすることができました。自分で作ったものが動いた時は、とても嬉しかったですし、大きな達成感がありました。

稲岡さん データ解析コンペティションでは、日本経済新聞社のグループ企業から提供していただいた、POSデータ*を使って、商品の売れ行きを予測するモデルを作ることに挑戦しました。

*POSデータ:どのお店で、商品が、いつ、何個売れたかを記録したデータ。


廣田さん このコンペで私は、Googleトレンド(検索キーワードの検索回数の変化を示すデータ)も活用しました。例えば、「お茶」というキーワードの検索数が増えれば、お茶の売れ行きも伸びるかもしれない、といった関係を分析に取り入れることで、より正確な予測モデルを作ろうと工夫しました。さらに、商品のパッケージに書かれている言葉(「美味しい」「健康」など)を、テキストマイニング*で分析し、どんな言葉が売れ行きに関係しているのかを調べたりもしました。

*テキストマイニング:文章を単語や文節に分解し、それぞれの出現頻度や相関関係を分析する手法。


廣田さん これらのデータを活用したくさんの要素の中から、売れ行きに本当に影響を与えているものだけを選び出すスパース回帰や、複雑なデータでも素早く正確に分析できる、近年注目されている機械学習の手法であるLightGBMも使いました。

稲岡さん 僕は、時間とともに変化するデータを分析し、将来の値を予測する時系列分析に取り組み、SARIMAモデル*という手法を使って、過去の売れ行きのデータから将来の売れ行きを予測しました。

*SARIMAモデル:時系列分析の中でも、季節ごとの変化(例えば、夏に売れる商品など)を考慮できるモデル。


廣田さん データ解析コンペは、本当に試行錯誤の連続でした。データを目的に合わせて整理したり、どの分析方法が一番良いか考えたり…、簡単なことではありませんでした。でも、それが大きな壁であったからこそ、多くのことを学べました。その後は、就職活動を経て、4年生で卒業論文に取り組みました。

稲岡さん 本橋ゼミと鶴見先生のゼミ合同で行われた卒業論文発表会は、とても緊張しましたが、先生方から鋭い質問や的確なアドバイスをいただき、論文をより良いものにすることができました。

授業での学び - 基礎から応用、そして最先端へ

鶴見 DSEP関連の授業で、特に印象に残っている科目はありますか?


稲岡さん 「統計機械学習モデリング」という授業は、強く印象に残っています。統計学や、コンピューターに学習させる技術(機械学習)の理論だけでなく、RやPythonというプログラミング言語を使って、実際にデータ分析を行う、とても実践的な授業でした。

廣田さん 毎週出される課題が非常に難しくて大変でしたが、その分、データ分析の一連の流れ(データ収集、前処理、モデル構築、評価)を、実際に手を動かしながら体験できました。一般的な統計学の教科書に載っていないような、最新の技術や分析方法も教えていただき、とても勉強になりました。

稲岡さん グループで課題に取り組むことも多かったので、チームで協力してデータ分析を行うことの難しさや、楽しさも学ぶことができました。

4年間のDSEPを通じた学び - 数字の裏にある「人」を読み解く

鶴見 ゼミでの活動や授業を通して、データサイエンスに対する考え方や、ビジネスに対する視点はどのように変わりましたか?

廣田さん データ分析は、あくまでビジネスの課題を解決するための「道具」である、ということを強く意識するようになりました。コンペや卒論、そしてアプリ開発を通して、データ分析の結果を出すこと以上に、「なぜこの分析をするのか」「この結果から何が分かるのか」「どうすればビジネスに活かせるのか」を考えることの大切さを学びました。

稲岡さん 僕は、データ分析には、数字を扱う分析だけでなく、人の気持ちや行動を読み解く分析も重要だということに気づきました。YBCのように、データがほとんどない状況で新しいビジネスを考える時は、特に、人の気持ちを想像したり、社会の動きを観察したりすることが大切になります。

廣田さん 卒業論文の中間発表会で、本橋先生から「データ分析の結果だけでなく、その背景にあるビジネスや社会の仕組みも理解しなさい」とアドバイスをいただいたことが、強く印象に残っています。データ分析の結果だけを見るのではなく、その裏にある「なぜ?」を考えることで、データから本当に価値のある情報を取り出すことができる、と学びました。

稲岡さん データは、ただの数字ではなく、人の行動や社会の動きを映し出す鏡のようなものだと思います。データ分析を通して、数字の裏にある「人」の気持ちや行動を読み解くことの大切さを学びました。

就職活動 - DSEPでの経験が自信に

鶴見 DSEPで学んだことは、就職活動にどのように役立ちましたか?

廣田さん 就職活動では、DSEPで身につけた課題を見つけて解決する力、論理的に考える力、そして人に分かりやすく伝える力、全てが活きました。DSEPでの実践的な学びがあったからこそ、自信を持って面接やグループワークに臨めました。

稲岡さん 僕も、DSEPでの経験は就職活動で大きな強みになりました。面接では、DSEPでPythonやRを学び、データ解析コンペティションでの取り組みを、具体的なエピソードを交えて話しました。DSEPで、データサイエンスの専門知識だけでなく、チームで働く力、難しい問題にも諦めずに挑戦する力など、社会に出ても役立つ力を身につけられたと実感しています。

鶴見 DSEPでの学びが、おふたりの就職活動を力強く後押ししたのですね。素晴らしいです。

後輩へのメッセージ - データサイエンスの面白さを体感してほしい

鶴見 最後に、DSEPに興味を持っている高校生、受験生、そしてDSEPの1年生に向けてメッセージをお願いします。

廣田さん 高校生、受験生の皆さん、DSEPはデータサイエンスの面白さを、大学1年生から、しかも実践を通して体感できる、日本でも数少ない環境です。データサイエンスのコンペ、ゼミでの活動、卒業論文など、難しい課題に挑戦する中で、データサイエンスの奥深さ、そして、それをビジネスに活かすことの面白さを知ることができます。データサイエンスに少しでも興味があるなら、ぜひDSEPへの進学を考えてみてください。

稲岡さん データサイエンス・ゼミナールの活動は確かに難しいですし、忙しいです。でも、それ以上に、仲間と協力して課題を乗り越える充実感、データ分析を通して新しい発見をする喜び、そして、自分自身の成長を実感できる毎日は、本当に楽しいです。データサイエンスの面白さを体感してほしいです。

鶴見 廣田さん、稲岡さん、本日は貴重なお話、本当にありがとうございました。おふたりの言葉から、DSEPでの学びが非常に充実したものであったこと、そして、データサイエンスを実践的に学びたい、という熱い気持ちでこの4年間を学ばれてきたことを伝わってきました。卒業後、社会に出ても、DSEPでの経験を活かして、大きく羽ばたいてください。心から応援しています。このたびは、ご卒業、おめでとうございます。



---インタビューを終えて。


 4年前、期待と不安を胸にDSEPの門を叩いた1期生が、頼もしく成長した姿を見せてくれました。設立に関わった一人として、まずはこのことに大きな喜びを感じています。
 インタビューを通じて、彼らがデータサイエンス・ゼミナールでの基礎固めから、本橋ゼミでの実践的な応用へと、着実にステップアップしてきた道のりが伝わってきました。
 特に印象的だったのは、単にデータ分析の技術習得に留まらず、ビジネス上の課題を解決するために「なぜ分析するのか」「結果をどう活かすのか」という本質的な問いに向き合う姿勢が身についている点です。これは、まさにDSEP設立時に我々が育成を目指したDSEP生の姿そのものです。
 彼らが培った力は、これからの社会でも大いに役立つことでしょう。DSEP1期生の今後の飛躍を心から期待しています。
 このような実践的な学びに関心のある方は、是非DSEPへの志願をご検討下さい!常盤台で皆さんをお待ちしております!

横浜国立大学 経営学部 DSEP運営委員長
鶴見裕之
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